ぴよとニワトリ
主人はぴよを鶏小屋に放した。しばらくして、私はぴよの様子を見に行った。
鶏小屋の戸を開けるとぴよの姿が見えない。だから、私は首を下げ、半身を小屋の中に入れた。と、パたパタパタと、何かが飛んできて、私の背中にとまった。
ぴよである。やっぱりな~
そのままぴよは私の背中におんぶして、また家に帰ってきてしまった。
次の日、また主人はぴよを鶏小屋に放した。直子と私、様子を見に行く。
またぴよはいない。小屋の中を見回してもいない。あれ~、ぴよはどこ?
いた!
ぴよは、壁と壁のほんの薄い隙間に挟まるようにおどおどと落ち着きのない様子。
どうやらニワトリが怖いようだ。私たちを見つけると、寄ってきた。直子に抱かさる。
家に戻り、エサをあげると、ものすごい勢いで食べた。小屋の中ではエサを食べられないみたいだ。
私と直子はぴよをこのまま家で飼いたいといった。だが、主人はぴよのためにはにわとり小屋で慣れさせたほうがいいという。
そして主人は来る日も来る日もぴよを時間を延ばしながら鶏小屋に運んだ。
私たちは、遠くからぴよを見てるだけにしなさいと言われ、そうした。
初めは、絶対慣れないと思った。ぴよは自分を人間だと思っているから。
おどおどと隅っこにいるぴよの姿を見るのはつらかった。
でも、少しずつ、エサ箱の端から素早くエサをついばみ始めた。そのころは、もうぴよは
小屋にお泊りだったので、意を決してのことだったと思う。そしてぴよはだんだんと
ニワトリになっていった。
そうして、なんとぴよは親になったのだ。ひよこを抱え、私たちがそのひよこを触ろうとすると、生意気にもぴよは怒った。にらんで私たちを威嚇する。
ぴよはたくさんのヒヨコたちを残し、ニワトリとして旅だったが、やっぱり主人が正しかったのだと思う。
さすが、ウズラの首の傷を針と糸で縫い、ヤギの出産を一人でやってのけただけのことはある。
ちなみ主人は建築士である。獣医ではない
。